診療案内
MEDICAL

先進医療について

腹腔鏡下子宮峡部頸管縫縮術

 頸管無力症は早産に至る主原因の一つです。約0.5~1%の頻度で発生し、出血や腹痛などの症状がないにも関わらず子宮口が開大し、高率に早産につながる疾患です。また、子宮口開大を認めてからできる治療は少ないため、予防という観点からは、対象症例を見逃さずに治療することが重要です。

 当疾患に対して、安静のための長期入院や、シロッカー手術やマクドナルド手術などの経腟的頸管縫縮術を主体とする手術療法が行われてきました。しかし頸管無力症の中にも、円錐切除後、子宮頸部筋腫核出後、広汎頸部切除術、子宮奇形などによる子宮腟部の解剖学的な異常により、一般的な治療が困難な患者さんが少なからず存在します。これらに対し、近年では、世界でも開腹式、腹腔鏡式などの頸管縫縮術が行われています。

 当施設では、有効性、安全性、身体への負担の観点から、経腟的に手術が困難な頸管無力症に対して、妊娠初期に腹腔鏡下に頸管縫縮術を施行しています。

 我々の施設では、本邦で初めて腹腔鏡下子宮峡部頸管縫縮術を行いました。その後もたくさんの症例の治療を行い、良好な治療成績を収めています。

 現在、当治療は当院倫理委員会の承認を得て実施しております。治療に難渋する症例でお悩みの先生方や、治療法がないと言われた患者さんは、一度当院にご相談いただくことをお勧めします。

  • Modified laparoscopic cervicoisthmic cerclage in early pregnancy for refractory cervical incompetence: A case report. Seo K, Dohi S, Ishikawa T, Ichizuka K, Sekizawa A, Nagatsuka M. J Obstet Gynaecol Res. 2019 Aug;45(8):1597-1602. doi: 10.1111/jog.14004. Epub 2019 May 28. PMID: 31137082
  • Three-dimensional ultrasound imaging of intra-abdominal cervical-isthmus cerclage. Ichizuka K, Seo K, Dohi S, Ishikawa T, Sekizawa A, Nagatsuka M. Ultrasound Obstet Gynecol. 2018 May;51(5):704-705. doi: 10.1002/uog.19052. No abstract available. PMID: 29542241
  • Re: Three-dimensional ultrasound imaging of intra-abdominal cervical-isthmus cerclage. Vigoureux S, Neveu ME, Capmas P, Levaillant JM, Senat MV, Fernandez H. Ultrasound Obstet Gynecol. 2018 Jul;52(1):124-125. doi: 10.1002/uog.19088. No abstract available. PMID: 29974594
  • Three-dimensional Ultrasound Imaging of Intra-Abdominal Cervical-Isthmus Cerclage. K Ichizuka, K Seo, S Dohi, T Ishikawa, A Sekizawa, M Nagatsuka. 2018 May;51(5):704-705. Ultrasound Obstet Gynecol. 2018 May. doi: 10.1002/uog.19052.

HIFU(High Intensity Focused Ultrasound:高密度焦点式超音波治療法)

 Twin reversed arterial perfusion sequence (TRAP sequence)は、全妊娠の1/35000で一絨毛膜双胎にのみ起こる特殊な疾患です。片方の胎児は正常児(ポンプ児)であるのに対して、もう片方の胎児の発生異常により先天的に心臓が無い場合(無心体児)に起こります。一絨毛膜双胎ではそれぞれの臍帯は胎盤を介して交通があるため、ポンプ児が無心体児に血液を供給しつづけ、あたかもポンプ児が無心体児を育てているような状態になっています。そのため無心体の増大に伴い、ポンプ児の心臓に負担が生じ、その結果心不全に至ります。無心体児の増大に加え、ポンプ児の尿量の増加による羊水過多から、破水や陣痛発来のきっかけとなったり、胎児水腫になったりします。無治療ではポンプ児の死亡率は、約50-75%と胎児の救命は極めて困難な疾患です。したがって胎児治療が必要となる代表的疾患の一つです。

 一方、現在行われている侵襲的な胎児治療は全て、子宮を穿刺し子宮内に医療器具を挿入して行います。治療成功の可否に拘らず、子宮穿刺に伴う出血、感染、破水、早産 などの合併症により児の予後が左右される症例が少なからず存在します。

 TRAP sequenceに対する胎児治療として、ラジオ波焼灼術が第一選択の治療法です。しかし、16週未満の症例は、絨毛膜と羊膜が癒合していないため、穿刺治療が行えない場合があります。特に、妊娠16週未満で発症したTRAP sequenceは、治療を待つ間に約1/3の症例で胎児死亡を来すといわれています。さらに、胎盤が穿刺部位に存在する(前壁付着胎盤)症例についても治療が困難な場合があります。

 我々のグループは、HIFUを用いた治療に関し数々の基礎的研究を行い、子宮穿刺を要しない胎児治療法を開発しました。HIFUは数ミリの範囲に超音波を収束させることで、焦点の組織温度を瞬時に上昇させ、生体内深部に熱変性をもたらします。また、焦点以外の部位に重大な影響を与えることはありません。この特徴を生かした超音波治療は、乳癌、前立腺癌や、子宮筋腫などの領域で臨床応用されています。

 この穿刺をしないという利点は、出血、感染、破水などのリスク回避、16週未満での治療介入が可能であること、胎盤位置を問わずに治療できることが挙げられます。

 こうした背景のもと、2013年に、世界で初めてTwin Reversed Arterial Perfusion sequence (TRAPs)に対して、胎児治療の成功を収めました。

 現在、当治療はさらなる安全性、有効性を高めるべく機器とプログラムの改良中です。HIFUによる胎児治療をご検討の場合は、一度当院にご連絡いただけると幸いです。

  • Ichizuka K, Hasegawa J, Nakamura M, Matsuoka R, Sekizawa A, Okai T, Umemura S. High-intensity focused ultrasound treatment for twin reversed arterial perfusion sequence. Ultrasound Obstet Gynecol 2012; 40 : 476–478.
  • Okai T, Ichizuka K, Hasegawa J, Matsuoka R, Nakamura M, Shimodaira K, Sekizawa A, Kushima M, Umemura S. First successful case of non-invasive in-utero treatment of twin reversed arterial perfusion sequence by high-intensity focused ultrasound. Ultrasound Obstet Gynecol 2013; 42 : 112–114.
  • Seo K, Ichizuka K, Okai T, Nakamura M, Hasegawa J, Matsuoka R, Kitadai Y, Sumie M, Tsukimori K, Yoshizawa S, Umemura S, Sekizawa A. Evaluation of second-generation HIFU systems for less-invasive fetal therapy in TRAP sequence. Showa Univ Med Sci 2017; 29 : 241–251.
  • Ishikawa T, Okai T, Sasaki K, Umemura S, Fujiwara R, Kushima M, Ichihara M, Ichizuka K. Functional and histological changes in rat femoral arteries by HIFU irradiation. Ultrasound Med Biol 2003; 29 : 1471–1477.
  • Ichihara M, Sasaki K, Umemura S, Kushima M, Okai T. Blood flow occlusion via ultrasound image-guided high-intensity focused ultrasound and its effect on tissue perfusion. Ultrasound Med Biol 2007; 33 : 452–459.
  • Ichizuka K, Ando S, Ichihara M, Ishikawa T, Uchiyama N, Sasaki K, Umemura S, Matsuoka R, Sekizawa A, Okai T, Akabane T, Kushima M. Application of high-intensity focused ultrasound for umbilical artery occlusion in a rabbit model. Ultrasound Obstet Gynecol 2007; 30 : 47–51.
  • Ichizuka K, Matsuoka R, Aoki H, Hasegawa J, Okai T, Umemura S. Basic study of less invasive high-intensity focused ultrasound (HIFU) in fetal therapy for twin reversed arterial perfusion (TRAP) sequence. J Med Ultrason (2001) 2016: 43 : 487–492.

産婦人科用デジタルカメラ【コルポカメラ】

 株式会社カシオ計算機との共同研究にて、カシオ独自のカメラ技術・画像処理技術を活用し、 子宮頸がんの早期発見に役立つ「コルポカメラ」を開発中です。臨床現場へのヒアリングを重ね、実用化に向けた取り組みを進めています。

EXIT(Ex-utero intrapartum treatment:娩出時臍帯非切断下帝王切開)

 EXITとは、帝王切開で胎児を分娩するのですが、その際に赤ちゃんの顔だけを出し、お臍を切らずに胎盤からの血流を維持したまま治療を行う手技です。つまり、胎児の顔はお腹の外に出ているのですが、まだ胎内にいるような状態なので、呼吸もしませんし泣きもしません。赤ちゃんが呼吸する前に気道に管を入れ、気道確保することにより、赤ちゃんが生まれてきた時に人工呼吸器が必要な状況にいち早く対応できます。

 治療の対象疾患は、先天性上気道閉鎖症や小顎症などで自然呼吸が困難な赤ちゃん、先天性横隔膜ヘルニアや先天性疾患のため自発呼吸を起こさず人工肺の導入が必要な赤ちゃん、先天性肺気道奇形や肺分画症などです。なお、EXITは臨床研究として実施しており、当院臨床研修審査委員会の承認を得て実施しております。